聖書がわかれば世界が見える

本書は、『聖書』に何が書かれているか知ることから始まり、『聖書』がもたらした国際情勢への影響まで概観できる一冊。記憶に新しいところでは、2001年の同時多発テロの直後、ブッシュ大統領が『十字軍』と絡めて演説したことによる弊害。プーチン大統領が述べた、「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」(新約聖書「ヨハネによる福音書」第15章13節)の聖句の引用および、12節と14節を飛ばした意味など、本書を通じて『聖書』を知れば知るほど、いかに国際情勢が『聖書』の影響を色濃く受けているかどうかを理解できるようになる。

目次

第1章 いまさら聞けない『聖書』とは
第2章 『旧約聖書』を読んでみよう
第3章 『新約聖書』を読んでみよう
第4章 世界に広がるキリスト教
第5章 キリスト教の分裂―正教会の成立
第6章 ローマ教皇の権威確立
第7章 イスラム世界との対立招く十字軍
第8章 キリスト教の再度の分裂―宗教改革
第9章 福音派が大きな影響力を持つ米社会

『聖書』はキリスト教の正典であり、2022年では世界中で3550万冊以上出版されている(日本では8万7000冊)(参考)。また、世界一発行されている本としてギネスに登録されている。それゆえ、教養として『聖書』を知っておくことは、世界の根幹をなしている部分を知ることにもつながる。「バベルの塔」や「モーセの十戒」といった『聖書』の基礎的な素養を元にして文学や映画が作られていくのも、そのテーマの根強さを物語っているのであろう。

『聖書』を通じて、世界とリンクしていく感覚というべきか。これを読み込めば読み込むほど、世界情勢に対する解像度が上がっていく気がする。それくらい、『聖書』に秘められた魅力というものは計り知れない。

本書の著者が池上彰さんなので、全体的にかなり「わかりやすい」説明に終始している。要点がシンプルに収まっているのだ。もちろん、こういった「通俗化」による代償はつきものなので、自分で『聖書』をしっかり読み込む必要はある。ただ、本書はそのモチベーションをめちゃくちゃ上げてくれるので必見。

作者: 池上 彰
SBクリエイティブ

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