本書は、ローマの哲人であるセネカの言葉の要約、その語録の紹介形式をとりながら、今を生き抜くための重要な要素を、具体的に、明瞭な形として自分の頭の中にイメージすることができる一冊となっております。
本書目次
序——セネカ略伝
「マルキアへの慰め」
「人生の短さについて」
「道徳についてのルキリウスの手紙」
「ヘルヴィアへの慰み」
「幸福な人生について」
「心の落着きについて」
「閑暇について」
「神意について」
おわりに——現代人にとってセネカとは何か?
セネカの言葉の中には、現実に差し迫った諸問題に対する具体的な解決方法が綴られています。とりわけ、ヒトの生死の根幹に関わるような内容が多く、2000年以上前の書簡形式を取りながらも、現代にも通じるであろう金言の数々が綴られています。
具体的には以下のような文章が挙げられるでしょう。
正しい精神の在り方は万人に開かれている。……プラトンを哲学は貴族として迎えたのでなく、哲学が彼を貴族にしたのです。 —— p. 133
……精神が物事を善悪いずれの方向へも導くのであって、精神こそ幸福な人生の、あるいは惨めな人生の原因なのです。 —— p.168
これらの文章力から感じとれるものは、描写の解像度が高くなればなるほど、その中身に入れ込まざるを得ないということでしょう。内輪話だとか具体話が多いもの——小説であれば、一人称視点に近しい「成長を」遂げられる——みたいに、内側に問いかけるような文章が響くのです。
本書全体を通して書簡の一部を切り抜いた形式となっているので、自分の好きな部分を好きなように読み取ることができますし、これまた好きなように読み止めることができます。それも著者の「新しい」翻訳と共に。
本書を通して、「今ココ」を生きるための道徳建設ができることを願って——