死とは一体なんなのでしょうか。一般的な死についての見解をまとめると、まず、私たちには魂があるという前提を想定します。つまり、私たちが普段慣れ親しんでいる肉体は単なる肉と骨の塊ではなく、霊的で非物質的な魂に依存していると信じているのです。
そして、そういう超常的なものが存在するのだから、私たちは死後も生き続けられると考えます。死は肉体的な消滅ですが、魂は非物質的であるからです。
もちろん、魂が本当に存在するか信じるか信じないかは別として、私たちは魂が存在してほしいと思うでしょう。そうすることで、死後も存在し続けることができ、死という「悪いもの」から逃れられるからです。
これがもし魂が存在せず、死が終わりを意味するならば、それは圧倒的に「悪いもの」とされ、死に対して恐怖と絶望を感じることはいたって自然な振る舞いとされるでしょう。
ゆえに、生は至上の幸せを意味し、自分の命を捨てる行為は極めて非合理的な所業となります。
このように、死は「悪いもの」として論理的な主張がなされ、じつに多くの人がこれらの全てを、また、少なくとも一部を信じている人が多いでしょう。
しかしながら、本書はそれら全てを否定します。具体的には、魂は存在しないし、不死は良いものではないし、死を恐れることは適切な対応でないし、自殺は適切な状況下においては合理的にも道徳的にも正当化しえるということを唯物論的な論調で展開し、否定、対応、無視という三つの反応を身近な例を用いて哲学していくことで、読者の納得を試みる一冊となっています。
本書を通じて宗教的な論拠に依存しない死のふるまいについて学ぶことで、自らが死について考えるきっかけとなってくれるでしょう。
本書目次
第1講 「死」について考える
第2講 死の本質
第3講 当事者意識と孤独感――死を巡る2つの主張
第4講 死はなぜ悪いのか
第5講 不死――可能だとしたら、あなたは「不死」を手に入れたいか?
第6講 死が教える「人生の価値」の測り方
第7講 私たちが死ぬまでに考えておくべき、「死」にまつわる6つの問題
第8講 死に直面しながら生きる
第9講 自殺
本書は、第〇章、〇節といった形式だはなく、第〇講という形の実際の講義に基づいた構成となっており、特に必読なのは、縮約版にあたって第1講の次に追加された、日本の読者のみなさんへ という項目(死について考えるときに、何を取り扱って何を取り扱わないかの立場を明確にしている)でしょう。
心(魂)と身体は切り離せるか
「今の自分」と「明日の自分」は本当に「同じ人」?――3つの答え
人生の意義とは?
「生きていない」し「死んでいない」はありうるか
本書を読むことで、死を避けられない私たちだからこそ取れる、最高の人生戦略について深く考えさせられること請負です。
If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today? - -Steve Jobs