愛に飢え、愛を知り、愛を与す少女の物語である本作。孤独/憎悪/渇望⇒自由。息をつかせぬほど高度な心理戦。むき出しの精神世界、脳髄を揺さぶる言葉の暴力……バロットの名を冠する少女が、未熟ながらも相棒たちと共に外殻を破ろうと試みる様は圧巻——
今や、『光圀伝』、『天地明察』等、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍されている作家、冲方丁さんから放たれる言葉の鉛玉。それは読み手の心の臓に食い込み、破裂し、貫かれた後に多大なる銃創を残して通り過ぎていく。
無慈悲に放たれる弾丸の数々をなんとかしてとらえようとするが、そのあまりの速度/鋭さのせいで叶わない。そこに存在するのは、貫かれたという事実、ただそれだけ。
「死んだ方がいい」
(中略)
ささやいたあとで、少女はその言葉の意味を考えようとしたが、考え続けるには努力が必要だった。あまりに慣れきった感じがするせいで。
暗く陰鬱な彼女の物語の行方は——
You can't make an omelette without breaking eggs.