文章の端々から滲み出る細やかな息遣い、涙に縋った哀願、畳み掛ける心理描写、そして、ヒロイン:ヴァイオレット・エヴァーガーデンを通して見え隠れする著者の苦しみと称賛。
それらが渾然一体となって引き起こす衝撃のあまり茫然自失。可愛らしいパッケージに釣られて購入→いい意味で裏切られた一冊。
紹介
『自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)』その名が騒がれたのはもう随分前のこと。 オーランド博士が肉声の言葉を書き記す機械を作った。 当初は愛する妻のためだけに作られた機械だったが、いつしか世界に普及し、それを貸し出し提供する機関も出来た。 「お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」 物語から飛び出してきたような格好の金髪碧眼の女は無機質な美しさのまま玲瓏な声でそう言った。 ≪第5回京都アニメーション大賞 初の大賞受賞作!≫
自分の感情を言語化できない辛さ、それを辛いと思うことすらできない痛みと悲しみ。そして、他者を排除することでしか存在意義を認められなかった彼女の小宇宙に生じる、自動手記人形としての使命と摂動。
手紙を通じて人々の想いを伝えることで、自分自身と向き合いながら成長していくヴァイオレット・エヴァーガーデン。ただそれは、自分の意思ではなく自分の存在を形作るものからの使命。それに突き動かされる原動力は一体どこから生まれるのでしょうか。
上巻読了の現段階では具体的な解は見出せませんが、ただ一つわかることがあるとすれば、主人を守ろうとする彼女の出立は美しい。ということでしょう。名は体を表すと言いますが、ヴァイオレット:花言葉は「貞節」、「愛」と、まさに花言葉通りなのだろうなと思わずにはいられません。
もしかすると——
——ただ、愛を知るために
尽き動かされているの知れません。
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文章の一つ一つがべらぼうに、めちゃくちゃにかっこいいのです。
自分が行動したという事実は、少なからず後悔を薄めてくれるものなのだ。
人には人に届けたい想いがあるからです。
特に、戦闘シーンの躍動感は必見です。
音韻の繰り返し方もさることながら、——←これの内面描写のおかげで読みやすい。緻密な描写や、繊細な心理描写によって、読者は物語に深く感情移入し、ストーリーに引き込まれます。特に、ヴァイオレットの純粋で無垢な内面と、それに対する周りの人々の反応が、読者の心を打つでしょう。
キャラクターたちの心情描写や、美しい文体、戦争の傷跡や人々の心の傷をテーマとした物語が、素晴らしい作品として読者に届けられています。特に、主人公ヴァイオレットの成長物語には、読者の心を打つ感動があります。本作を読むことで、人間らしさや愛、希望の大切さについて再認識できるでしょう。是非、手に取って読んでみてください。