ファウンデーション

銀背を全部読んでから、とか、千冊読んでから、といった「何冊読めばSFを語れるのか」的宗教論争はあるけれど、何冊増えようとも《ファウンデーション》シリーズは外せない。

と、いい切ってしまっても無問題なほどに多くのSFファンが目を通す本作は、数あるSFの中でも、とりわけポリティカル・フィクションものとしての伝統を築きあげた作品である。さらには、作者が亡くなったあとも、『新・銀河帝国興亡史』として続編が書かれたりと、世代を超えて愛されている大傑作なのだ。

舞台は、一万二千年にわたって存続している銀河帝国。心理歴史学者ハリ・セルダンは、個々の分子の運動は予測できないが集団の気体なら平均運動は計算できるという具合に、予測不可能な個人からなる人間集団のふるまいが予測可能なのではないかという発想のもと、銀河帝国の将来を予測する。その結果、帝国の崩壊が不可避であることに気づく。来るべき三万年の暗黒時代。しかし、この状態を千年に縮める方法がある。それは、人類の知識の集大成を銀河百科事典としてまとめ、それを土台にして文明——ファウンデーションを築くことだった。

迫り来る危機を前にして活躍する語り手たち。果たして、銀河帝国に徐々に忍び寄る滅びを前にして、新たな秩序を形成することができるのか。

とにもかくにも、本作は固有名詞のセンスがえぐい。気体分子運動論を人間に応用した学問である心理歴史学はPsychohistory、人類の叡智である銀河百科事典はEncyclopedia Garactica、銀河系の端の惑星ターミナスは終点の意味を持つterminusなどなど、英単語からそれらの意味を頭の中にスルッと埋め込むことができる。

こういう文字を追う楽しさに加えて、それらの描写が絵的に浮かび上がってくる筆致が素晴らしい。読むSFならぬ、見るSFという感じ。芸術的な作品みたいな。

やっぱりアシモフは最高だぜ!

作者: アイザック・アシモフ/岡部 宏之
早川書房

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