ミッキー7

クローン技術が応用されてはや四半世紀。羊から始まったそれはさまざまな動植物にいたるまで成功例を積み重ねてきた。しかしながら、人間にいたってはいまだにクローン技術が適用されてない。というのも、人間の育種や、道具としての手段化といった倫理的な問題が立ちふさがっているからだ。

本書は、そんな倫理的な問題を最初からキックアウトして、なんなら、使い捨て人間《エクスペンダブル》という物騒な役割として、クローン人間をテラフォーミング用にコキ使っている。実際、主人公は使い捨て人間としてコロニー建設ミッションに携わることになるのだけれども、与えられるミッションはことごとく危険。どれくらいかというと、タイトルにある7が、ラッキー7だとか安息日的な意味ではなくて、7人目のミッキーという意味で使われるほどだ。このあたりの経緯を深掘りしてくと結構グロい描写が続くこともあり、このページに書くのもナントナク気が引けるので、気になる人は実際に読んでみてほしい(思い出すだけでゾワっとしてきた)。

さて、そんなミッキー7だが、あるミッションから命からがら帰還すると、次のミッキーであるミッキー8が出現していた。本来ならあってはならない状態——バレたら二人とも仲良く処刑の窮地に立たされたミッキー7は、生き残りをかけて奮闘する。限られた資源、供給されるカロリーが極限まで切り詰められた状況、果てしなく上昇するミッションの難易度。こういうギリギリなSF。好きなんだよなぁ。

嬉しいことに、本書はなんと映画化も予定されている。非英語作品として初のアカデミー賞作品受賞『パラサイト 半地下の家族』(2019)のポン・ジュノ監督が、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)のロバート・パティンソンを主演に迎えた『MICKEY 17』(2025年1月31日北米公開)として新たなミッキーを見れるかと思うと、いまからすごく楽しみだ。

作者: エドワード・アシュトン/大谷 真弓
早川書房

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