ジョゼと虎と魚たち

アニメ映画版のジョゼを見る機会があったので原作小説の方も読んでみたのですが……胸が苦しくなったり軽くなったり、感情の起伏がジェットコースターのように波打つ作品でした。

人間の負の坩堝——障がい者に対する世間からの冷たい対応、性被害、無才——どろどろに煮込まれていながらも関西弁のポップさが相まっているのがオツで、この点、アニメ映画の方の「純愛」とはまた違った味わい深さを感じることができます。

ジョゼのような立場にもし私が立っていたらどんな感情を抱くのでしょうか、と考えてみる。

叶わない自由への羨望、救いのなさ、内に秘めたる果てしない死の香り。どうしようもない感情ばかりで涙がこぼれてしまった……その点、アニメ映画の方が心を楽にして見れると思います。

作者: 田辺 聖子
KADOKAWA

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