木曜日にはココアを

本書は、川沿いの桜並木に佇む「マーブル・カフェ」を起点として、ちいさくて、あったかい物語が連綿と続く色彩ゆたかな一冊。

わたしの色ってなんだろう。

色とりどりの物語に佇むキャラクタターたちをはために、わたしは思った。

でも、考えれば考えるほど、わたしを彩っているものたちの源泉は、白い吐息のように空を舞う。

とらえきれないそれらをはために、わたしは首をひねった。

なんでわからないんだろう。

これらがわかったら、わたしはなにか変われるかもしれないのに……

淡い期待を胸に、本書に出てくる登場人物みたいに喫茶店でココアを頼んでみる。

 

白磁のなかには、陽光に照らされて輝くココアブラウン。表面を覗き込むと、わたしのシルエットがゆらゆらとうごめいた。

ほのかなあまいかおり。

口にはこぶと、やさしさが舌を包んだ。

もう一口。

やっぱりあまい。

ふと、窓の外をながめると、いつもとおなじだと思っていた景色が、少しかわって見えた。

 

ココアのおかげ?

それとも、本のおかげ?

 

わたしにはわからないけど、無口なココアは、わたしにとってのマスターだって、そんな気がした。

 

作者: 青山美智子
宝島社

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