たまさか人形堂ものがたり

人形ってきっと、彫刻やロボットや縫いぐるみみたいに実務的じゃない、物質性とは一線を画した、抽象度の高い概念なんですよ。

私は、この一文にハッとさせられた。

もう十何年も前のことになるけれども、リカちゃん人形と戯れていたときに去来していた、無色透明な空気感。名状し難い陽炎が、ゆらゆらと空間を歪ませていたあの頃の描写にそっくりだった。

自身との対話。人形を通して自分の無意識を顕在化させている。

最近はまったく人形遊びをしなくなってしまったけれども、たまには遊んでもいいかなと思った。

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所々、クスッとくるユーモアがあり、真をつく文章があり、

かと思えば、重箱のすみをつつく感じになるのだけれども、登場キャラクターの行動規範を決定づける描写で?な部分があったり、

例えば、情緒欠陥かと思うばかりの、子供っぽい残酷性を発揮する ってあるけど、子供が残酷性を発揮するタイプは、心理学で言うところの『モデリング』のケースがあるし、必ずしも子供っぽい残酷性が情緒欠陥に結びつくわけでない。

急峻な場面転換や、誰が会話してるのかわからなくなるなど……

結構前のめりになって読まないと難しい本だと思う。

読ませる本というよりかは、好きなものを書いたらこうなったっていう感じ?

作者: 津原 泰水
東京創元社

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