人間として無意味に生きることを許容する。これはなかなかできることではありません。
人間とは、自分の生活をできる限り意味で満たすためにそれに基づいた生きがいのある生活を求める。と、精神医学者のフランクルは「意味への意志」という形で提唱しましたが、本作の見どころは、意味それ自体を含まずとも、信じるものが明確でなくても、人間は人間でい続けられるということへの実在性と、それを受け入れることこそが人間と感じられる点です。
文章のところどころに感じられる又吉さん自身の苦悶。本編読了後、あとがきを読んだ際に、「あぁ、僕もこの感覚やわ」と、深いため息をもらさずにはいられませんでした。
本作は、まさしく、ありきたりな生き方に疑問を抱く人間に処方する精神安定剤です。