目まぐるしく変遷する世界観。それを理解するために読み続け、自身の内部感覚を幾重にも積んでトレースし、しかして、気づいた頃には多対一方向への調和。
「なめらかな世界と、その敵」この表題作から漂う並々ならぬ気配。それはまるで、触れたもの全てをSF沼の奥底へと引きずり込むような衝撃。
並行世界/私=「私」?/時間遡行/福音/AI/クランチ/
SF好きの、SF好きによる、SF好きのための小説でもあり、SF好きを増やすべく間口を広げている小説でもあります。とりわけSFのバックボーンに薄い人は、巻末の「あとがきにかえて」にも是非目を通してほしい一冊です。
収録作一覧
なめらかな世界と、その敵
ゼロ年代の臨界点
美亜羽へ贈る拳銃
ホーリーアイアンメイデン
シンギュラリティ・ソヴィエト
ひかりより速く、ゆるやかに
個人的には「ゼロ年代の臨界点」の筆圧に圧倒。親殺しパラドクスの限界点——SF殺しのパラドクスを痛感。
学生時代SFに熱中した日々も蘇る、情熱を再燃させてくれる一冊です。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
オットー・フォン・ビスマルク