本書は、誰しもが聞いたことがあるようで、それでいてその内容については深く考えられてこなかったこのイデオロギーの意義を、神々の変遷から始まり、神国思想の今後について語ることで綿密に描写しています。
この本のすごいところは、ひとえに、『親皇正統記』や、『古今著聞集』といった古文書が意味するところを例題とともに分かりやすく描写しているところでしょう。
昨今、神仏に対する崇拝という意識からの解脱が目立っており、形式としてのお参りや、イベントとして楽しむだけにとどまった初詣など、その事項が生まれたときの背景からすると目を塞ぎたくなるような乖離が進んでいるわけですが、そういった現状を踏まえたうえで、本書を片手にその歴史を振り返ることができたのは、教科書で歴史を学ぶときとはまた違った面白さを見出すことができて非常に有意義でした。