民主主義

多くの人にとって、民主主義という言葉を聞いた時にまっさきに浮かぶのは、みんなのことは、みんなで話し合って決める。という、文字通りの民主的側面であると思います。もちろん、それこそが民主主義という言葉に秘められた思いであるということは、想像にかたくありません。

しかしながら、このみんなで話し合って決めるという文脈を考えたとき、『どのような態度』でもって、決めていくのか。というところまで、踏み込んで考えられていないのではないでしょうか。

本書は、この『どのような態度』というもの、もっと言うと、民主主義というものの本質を教えてくれる一冊です。

本題:民主主義の本質とは?

それでは、本書の描く民主主義の本質について書いていきます。

それは、はしがきに書いてあるこの一文:

すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神である。

これに、本書の民主主義に対する考え方が詰まっています。 くだけた言い方をすれば、 自分が嫌なことは、人にするな  という、お互いの理解と、愛、信頼性をもったうえで接すること、それこそが、民主主義なのです。

一見、シンプルな考え方ではありますが、シンプルであるからこそ実生活に適用しやすいのです。例えば、無理が通れば道理が引っ込むという場合を考えたとき、どれほど形式上は民主主義であったとしても、それは本質的な民主主義ではないということを強く意識させられること請負です。

本書では、この本質を裏付ける民主主義の成り立ちから、実生活へと適用するためへの知恵が詰まっているので、ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

所感

本書は、民主主義に対する解像度がべらぼうに上昇することまちがいなしの一冊です。 中高生向けに刊行された教科書だからとあなどるなかれ、諸外国の制度を具体的に比較検討する姿勢や、滑らかな論理構成は、単なる教科書の枠を超え、いっぱしの学術書といっても差し支えないほどの素晴らしいできばえです。

もっと早くに出会えていれば、「目覚めた有権者」のはしくれとして小さな一歩を踏み出そうとするきがいで、人生にいろどりを添えることができたと想うと、悔しさで胸が押しつぶされそうになりました。

ただ、今からでも遅くありません。精神の糧を求めて行動あるのみですね。

Today is the first day of the rest of your life.

作者: 文部省
KADOKAWA

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