All's Well, That Ends Well.
文字通り、終わりよければ全てよしの作品。ミステリの極地。
内容
戦争が生んだ殺意と殺人。
”誰カガ罰セラレネバナラヌ”——ある死刑囚が残した言葉が波紋となり、静かな狂気を育んでゆく。
その狂気の行き着く先で、驚くべき真相が語られる——
感想
良作の基準として、
・テーマを一文でまとめられる
・最初の一文からぐっと引き込まれる状態でスタート(説明から入らない)
とかいろいろあるけど、本作はそういうまどろっこしい基準を度外視して、ミステリがミステリたる所以を如実に体現している。しかも、単なるギミックの応酬で構成するのではなくて、羨望、忌避、狂気、そういう激動の時代が孕む人間の根深い闇が色濃く反映されている。
私の中で、山田風太郎は「忍法帖シリーズ」くらいの存在感でしかなかったけど、とんでもない誤解だったと気づけた作品だ。
平和な時代に生まれてこれた安堵と、生まれることのできなかった悔しさが入り混じった、甲乙つけがたい読了感が残った。