ソラリス

ほんと怖いですよ、この本。形而上の概念が形をもっちゃってます。そんなことあり得ないはずなのに、超自然的なソラリスのふるまいがリアリティをひっさげて現実に侵食してくるのです。やがて、人間の認識の限界が否応なしに自覚されます。しょせん創作だろとタカを括っていると痛い目を見ます(見ました)。覚悟の準備をしておいてください。狂気にのまれます。もし、娯楽チックなおもしろさを求めて読むのなら、他の本を読んだほうが3000倍有意義です。それでも読みたい、という奇特な人は、ためしに、怪物たち(pp. 197 - 245)に記載されているソラリスの海の描写をご覧ください。この本がからだに合うか合わないかすぐわかります。いいですね。

ワザップジョ⚪︎ノ的な勢いのままにあらすじ

惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が? ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく……。人間以外の理性との接触は可能か?――知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版

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最終的に、ソラリスの海の謎は謎のままに終わります。はい。一応、ソラリスの海とはなんぞやについてつらつらと、やれでっけぇ脳だの、計算機能を持ってるだの目が滑るくらいがっちりと補足されてはいますが、真相は明かされません。結局のところ、ソラリスの海の超常現象——あるときは地球上の都市を思わせるような擬態をしたり、またあるときは死んだはずの妻そっくりな存在を造り出したり——は神秘的なものとして片付けられます。

それでもって、本書のキモというべき、認識を超えた存在と接触したときの人間の所作は、

何もわからなかった。それでも、残酷な奇跡の時代が過ぎ去ったわけではないという信念を、私は揺るぎなく持ち続けていたのだ。

p. 387

といった非常に余白の残るものとなっているのです。一意に終わってしまっては小説のうま味がなくなってしまうでしょうが、あまりにも広すぎる。僕的には、ネガティブ・ケイパビリティを生きるという意味でとったのですが、どうなんでしょうかね。

わたし、気になります!

作者: スタニスワフ・レム/沼野充義
早川書房

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