カップ一杯のコーヒーの中には、芳醇なロマンに満ちた「物語」の数々が溶け込んでいます。その液体を口にするとき——意識するしないにかかわらず——私たちは「物語」も同時に味わっているのです。 (p. 3)
この「物語」を紐解いていくことが、本書のメインテーマとなっております。
とりわけ、本書がコーヒー通史本として優れている点は、
そこに書かれた「物語」が「本物の物語」であるかどうかを常に意識して書かれていることにあるでしょう。
史実として残っているかどうかを逐一記述することで、真摯な態度で「物語」を解説している姿勢が表明されており、それぞまさしく、コーヒーのおいしさの感じ方をより一層深めようとする気概に満ち溢れています。
読了後、いつの時代もコーヒーは人を魅了する魔力を秘めているんだなぁと思いを馳せると、普段飲んでいる味気ないインスタントコーヒーもまた違った味がいたしました。
本書の章構成
序章 コーヒーの基礎知識
1章 コーヒー前史
2章 コーヒーはじまりの物語
3章 イスラーム世界からヨーロッパへ
4章 コーヒーハウスとカフェの時代
5章 コーヒーノキ、世界へはばたく
6章 コーヒーブームはナポレオンが生んだ?
7章 19世紀の生産事情あれこれ
8章 黄金時代の終わり
9章 コーヒーの日本史
10章 スペシャルティコーヒーをめぐって
終章 コーヒー新世紀の到来
個人的に興味深かったのは、
イギリスは実はコーヒー先進国だったっていう話(p. 92 - 紅茶の国っていう印象が強かったので)、コーヒーブレイクに掲載されている各項目。コーヒーハウスの変遷。