1日=24時間。これは古代エジプトから連綿と続くごく当たり前の摂理として定着しており、日常を何気なく過ごす分に疑問を抱くことはまずもってないでしょう。
そんな常識から本書は一歩踏み込んで、太陽の傾きによって規定されている時計に生物がわざわざ順応している理由は何なのか、それを分子生物学の最新の研究から解き明かし、さらには睡眠の謎にも迫る構成となっております。
本書を通して、分子生物学、ひいては、自然科学を学ぶ楽しさを知ること間違いなしの一冊です。
本書目次
1章 なぜ生物時計があるのか
2章 脳の中の振り子
3章 生物時計の部品の発見
4章 分子生物学が明かした驚異のしくみ
5章 不眠症のハエから睡眠遺伝子を探る
6章 睡眠の謎
7章 生物時計は睡眠をどう制御しているか
8章 睡眠研究の突破口——ナルコレプシー
個人的におすすめなのは、以下の2項。
3章 人間とハエがつながった(p. 63)
8章 神様の粋なはからい(p. 171)
前者は、人間とハエで異なるはずの脳でも、生物時計を動かすためにほとんど同じ遺伝子を使っていたという描写に、人間とハエの共通祖先を想像するだけでもわくわくさえられたり、後者では、forward⇆reverseの異なるアプローチから相互補完して1つの形となる科学の面白さを知れます。
所感
僕はうつ病由来の不眠症を患っており、睡眠時間1.5時間の内、途中で必ず1回飛び起きるっちゅうのを毎日繰り返しているため、睡眠時間が足りなすぎて死ぬんじゃねぇかとビクビクしながら生きているのですが、睡眠が足りなくなれば、必ず人間は眠ってしまう(p. 128)といった描写や、「睡眠障害相談室」のリンクですとか、少しばかり心が救われました。ありがたや。
巻末のブックガイドでシントピカル読書を実践できるのも素晴らしい。