涼宮ハルヒの憂鬱

『涼宮ハルヒ』といえば、2003年の刊行以来、シリーズ累計2000万部を超える超ロングヒット作品だ。2006年に放送されたアニメ版も、深夜枠かつわずか11局での放映、全14話という短期間だったにもかかわらずヒットを収めている。当時のニコニコ動画ではアニメのエンディングを踊ったハルヒダンスがバズり、アニメ放送以降には企業とのコラボも相次ぎ、作中の人気キャラの名前を冠した飲料も発売された。

『トップをねらえ!』『エヴァンゲリオン』から見出されるような、メディアミックス成功テンプレートである、美少女キャラ×ロボット×SFという組み合わせならぬ、美少女キャラ×巨人×SFのエッセンスをふんだんに詰め込んだ本作。

そんな本作を支える骨組みはまさしく、日常生活へと潜む非日常への渇望である。人々の心へと巣食う中二病心への憧憬といってもいいかもしれない。それは、リアリティに生きる人々には到底もぎとることのできない禁断の果実。一口かじるごとにより「虚構」がリアリティへと侵食してゆく危険な代物。ただ、それを求めずにいられないのは人の業か。

文章のはしばしからほとばしる理想的な世界へのあこがれとあきらめ、しかして、突如舞い降りるSF要素からの大円団。delete from 非日常 where 日常非日常includes日常というクエリがあたりまえの/リアリティが「虚構」へとリンクしていく/非日常が日常へと侵食する/非日常を脱構築する/ような、そんな本作の力をぜひ味わってほしい。

作者: 谷川 流/いとう のいぢ
KADOKAWA

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