システム・クラッシュ

2019年に邦訳されて好評を博した、『マーダーボット・ダイアリー』の続編は邦訳4作品目。時系列は邦訳2作目の『ネットワーク・エフェクト』の続き。前作の内容を忘れちゃったとか、本シリーズを読んだことないって人もご安心を。本書の巻頭に、前作あらすじがネタバレ込みで詳細に載っている。やったね弊機ちゃん!

物語の語り手は、警備ユニット。有機組織と機械を組み合わせた人型アンドロイドだ。かつて大量殺人を犯したとされ、記憶を消されていた過去を持つ。このマーダーボットの一人称が「弊機」と訳されたことで、SF作品で一躍ときの人(構成機体)になったといっていいだろう。名は体を表すっていう言葉とおりに、弊機はやたらとネガティブ属性がつよい。特に、警備ユニットだけあって潜在的な危険に対する評価に敏感。物事が悪く進むことを考えがち。だけど、ここぞってときにはいかんなく本領発揮するという仕事人(構成機体)。言葉づかいが粗暴で他者に対してあたりが強いわりに、「です」「ます」表現でマイルドになっている妙ちきりんさも、なかなかに楽しめる要因だ。

本作は、異星遺物に汚染されたコロニーの入植者を、ハゲタカ企業から守るという内容だ。奴隷契約によって人的リソースを確保しようとする企業は、問答無用で、入植者を拉致しようと企む。警備ユニットはあの手この手で企業の魔の手から逃れようとするが、任務中にシステム障害を起こしてしまう——

そんな危機迫る状況において、弊機は人間を守り抜くことができるのだろうか。どきどきハラハラな展開に目を離せない。

作者: マーサ・ウェルズ/中原 尚哉
東京創元社

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