アランの『幸福論』は、ラッセルやヒルティの『幸福論』と並んで三大幸福論と称され、世界的な名著です。これを記したアランは、パリの学校で教鞭をとるかたわら、哲学者、評論家としても活躍し、20世紀前半のフランス思想に影響を与えました。
自然状態においては人間は本来不幸になってしまうという前提に立ち、「幸福」になるためには自らが「幸福になる」という意志でもってコントロールする必要がある。と説くアラン。本書は、そのhow toがマンガ形式で詰まった一冊で、「幸せ」を見つけ出すための大切な心構えがわかりやすく詰まっています。
本書を皮切りに、より「幸せ」の本質とは何かについて知るためには岩波文庫版のアラン『幸福論』がおすすめです。アランの特性上、体系的に述べるよりも具体例を挙げて述べるというスタンスなので、哲学書としては異例の読みやすさを誇っています。岩波青本ではあるけれども赤本の感覚ですいすい進めるのでおすすめです。
本書目次
Chapter1
仕事の大小で幸せは決まらない ~「希望」を捨てないおばあさんの生き方~
Chapter2
成功には「意志」の力が求められる ~天才科学者の胸の内に秘めた思いとは?~
Chapter3
目の前の「やるべきこと」に熱中しているか? ~クワガタ少年が教えてくれたこと~
Chapter4
“心の風邪”から立ち直る ~心が折れてしまった仲間を救え~
Chapter5
愛はすべての人に幸福をもたらす ~盲目のバイオリニストと親子の絆~
Chapter6
幸福はいつだって連鎖する ~友人の幸せを心から祝福できるか~
本書では、アランの『幸福論』のエッセンスが、6つのチャプターに詰まっています。ざっくり分けると、前半部分は内面的な「幸せ」について、対して、後半のチャプターからは外向的な「幸せ」に関する記述。マンガの構成上、チャプター間の関係性が完全に疎になっているわけではないので、最初のチャプターから読み進める必要がありますが、自分のおかれたポジションに応じて読むチャプターの重要度を調整することができるのはよい部分。ストーリーが本筋を崩壊させるほど際立ったものではないので。
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成果主義とは真っ向からアランの『幸福論』の一つでしょう。現実問題として、結果が出る→「幸せ」という前提条件で立つことは、それを実現し続けられるスキルがない限りハードルが高いことであることは言わずもがな。ならば逆転の発想で、「幸せ」→結果が出るという認識に立てばええやないかというシンプルさ。
シンプルゆえに実生活に適用しやすい。何回も何回も繰り返し読んで、実践を心がけていきたいものです。