この本はマジですごい。人々がどうやったら革命を起こせるのかどうかってのが、組織の作り方から実行の仕方・タイミングまで詳細に語られています。
以下、Amazonの商品説明
2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには…ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨篇。
ベースとなっている考え方は、権威主義的なものから離脱して、個人的な自由、経済的な自由の双方を重視するというリバタリアニズムについてのあれこれなのだけれども、本作のすごいところってのが、月世界という過酷な環境ゆえに政治なんかよりも酒・ギャンブルのほうに傾倒していた月世界人の大部分を、革命のために一致団結させることができた手法なのです。
これは地球と月世界の価値観の違いをうまくついたものですが、“生き、そして生きるがままに生きよう”と、信じている地球人の同情も買えており、革命に無関心な奴らから関心を買うというプロモーションが大成功をおさめたと言えます。
ある種、主人公サイドがペテンをかますことによって月世界の人々を籠絡していくのが大筋の流れなんですが、この正当化の仕方・話題の逸らし方が絶妙なんです。
そうすることで、本作の革命を完遂させるために一番のネックとなっていた月世界の穀物の輸出停止っていうのを、月世界の穀物夫の反対を押し切ってすすめることができ、そして、行政府から束縛されない自由への一歩を確実にしたのです。
リバタリアンの理想的な世界のために求められる「英雄礼賛文化」とその危険性も十全に抑えられているのも最高。
本作を通じてリバタリアニズムのエッセンスを掴むことによって、わたしたちの生活がいかに政府によって束縛されているのかどうかを再考することができるのでおすすめです。
There ain't no such things as a free lunch.