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これはめちゃくちゃおすすめ。
AIロボットものが好きな人、例えば『われはロボット』『マーダーボット・ダイアリー』『Y田A子に世界は難しい』といった作品に心を掴まれた人なら、間違いなく刺さるはずです。
自由意志を獲得したロボットが抱える、どうしようもないほどの孤独。圧倒的な高性能ゆえに特異点として存在することへの誇りと自己嫌悪の揺れ。そんな特異な境遇で生み落とされても、創造主である博士への思慕だけは失わない健気さ。
「結局はプログラムの規律だよね」と片づけることもできます。けれど本作では、そのプログラムが超自我めいた働きを持ち、そこから逆説的に人間らしさが滲み出ている。その描き方が本当に巧いのです。
自由意志を扱うSFではよく、「魂はどこに宿るのか——肉体か、それとも精神か」という問いが浮かび上がります。本作もまた、自由意志や意識の本質に触れつつ、「魂=意識・意志」として肉体とは独立した存在として描いています。生物的反応や脳の物理現象以上の何かがあるのか、という哲学的な疑問に静かに寄り添う立場です。
本作自体は自由意志の問題を深掘りすることはありませんが、そのロボットを「魂を持った一人の個人」として受け入れてくれる少女の存在が、物語に温度を与えています。
そして彼女との出会いを経て、ロボットは初めて、「愛」という感情を知っていくのです。その気づきが、ただの機械ではない「誰か」としての自己を結実させていく。その工程がそそられるんですよねぇ。
読書メモ
p. 65 死にたくないからではない。生きたいからである。
p. 66 自由意志がなければ罪はない
p. 80 献身によってのみジェネシス星は救われる
p. 81 母星を救うには孤独に耐えなくてはいけない
p. 84 地球:気候破壊により、惑星として死の道をたどっている
p. 105 アベル:思いやりとやさしさがある
p. 139 アベル動揺 自分が嫌う以上に嫌われている状況
p. 230 アベルの存在