楽園とは探偵の不在なり

天使が世界で蔓延るようになった世界。 それは2人殺せば地獄行きという新たなルールを打ち立てた。 ある日、探偵の青岸は天使が集う常世島に招待される。 そこで起きた事件は、天使が降臨してから久しく行われなかった連続殺人だった。 かつて難事件を数多く解決してきた名探偵は如何にして自身の正義を見失ったのか。 そして、この事件の果てに何を見出すのか。

斜線堂有紀の最新作に貴方は何を見る。

斜線堂先生の本はまだ3冊程度しか読んだことのない私ですが、胸を張って言えることがあります。 この人、奇抜な現象とそこに住む人の考え方を構成するのが上手すぎる。 どんなに面白い世界観であっても、登場人物の思考が現実世界の我々と同じで、思考の目新しさがないという経験はありませんか? この人の作品に限ってそれは全くない。 それどころか、それぞれの登場人物が世界に適応した末の思考をぶつけ合ってくることが多いんです。

今作では正義を問う物語となっています。古今東西ありとあらゆる作品で取り上げられたこのテーマ、それはこの世界では余りにも頼りないものです。 それでも彼らの生き様には夢があった。

貴方にもそんな正義がきっと芽生えます。

作者: 斜線堂 有紀
早川書房

カテゴリー

作者: 斜線堂 有紀
早川書房
書籍情報