普段、黙々と本を読むタイプなのですが、無意識のうちにほそぼそと声を漏らしながら、文字の裏側を追っていたことに驚いた一冊でした。
記号に込められた意味
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割注
詩の正体に迫る上で避けて通れないのは、上記の諸要素です。
というのも、一見、どれひとつとっても単なる記号としか判別つきませんが、詩というカテゴリー内で配置される状況下では極めて異彩を放つからです。具体的には、単なる記号の枠組みを超えた、繊細さや、息遣い、呼吸の切れ目を内包し、なおかつ、それらの諸要素が渾然一体となって文脈に新たな息吹をもたらすことが挙げられるでしょう。
そのようにして複雑に絡まった要素で構成された詩を紐解くには、一体どうしなければならないのでしょうか。
本書では、その答えの一端に思考の深淵へとダイブすることで近接していきます。
所感
詩とは何かを知る上で、世界の根源へとつながる樹木の、数多の細枝を辿る必要性と、深淵にふれるためには「死」を通過しなければならないというエロティシズムには恐れいりました。なりよりも、その筆の謙虚さには目を見張ること間違いありません。
何十年と詩に携わった人というのは、こうも腰が低いというか、紳士というか、人間くさいというか、言葉、いや、世界のきわに風穴をちょびっと開けるなにかを扱うために、そうならざるをえないというか……正直、男色の毛はないはずですが、びしょびしょになってしまいました。
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実のところ、この本についてなにか書くことを若輩のわいはためらってしまいました。というより、他のどの本に対しても書いてはならないような気がしてなりませんでした。
普段、こういう枕詞をつけるのは、わいの精神衛生上よろしくないのですが……
結局のところ、全てを表現しきれない(今のわいには、この現象が非常に嫌なのだけれでも)、表現しようとすると、位相がずれる。
その事実 ? (もしかしたら、これは至極真っ当な、むしろ、あるべき姿なんだろうけど):(死)
ふとした瞬間、その刹那、死にたくなるゼロ点が頭を垂れるときがままあって、これぞまさしく、そういうことなのだろうかという感じ。でも実際、実行できるほどできた人間ではないし、勇気もないし、ただ、その縁で、生と死の境目で、ぶらぶらと弄ばれているような気がして、悲しいです。じゅうたんの模様みたいに、鳥の模様かと思えば、いつの間にか魚の模様へと、花の模様へと、見るたびにうつろいゆくような、そんな心持ち。