文字世界で読む文明論 比較人類史七つの視点

中国の一地方都市から感染が始まったとされるウイルスは、数ヶ月のうちに全世界へと蔓延し、1929年の「世界恐慌」に匹敵しうる経済危機をもたらしました。人類の発展に伴いグローバリゼーションが加速する中で、かえって、パンデミックが短期間で爆発的に世界を巻き込むことになったのです。このことは、絶え間なく成長していた文明が「想定外」の出来事については脆いことを明らかにしました。

そのような背景をもとに、本書では今までのような過去を顧みない「行け行けドンドン」の文明進化から、より成熟した文明進化——「フィードバック」制御——を伴うために有益な7つの視点を提唱しています。

本書目次

プロローグ 文明が成熟するために
第一章 文明と文化とは
第二章 ことばと文字
第三章 知の体系の分化——宗教と科学と
第四章 文明としての組織 文化としての組織
第五章 衣食住の比較文化
第六章 グローバリゼーションと文化変容
第七章 文明と文化の興亡——文明の生き残る道
エピローグ 現代文明と日本

とりわけ、本書の強みとなる部分は、日本の未来に関しての記述でしょう。

内発的かつ創造的なイノヴェーション能力を身につけ発揮していけるかにかかっているのである。 ——(p. 242)

の記述が、スマホ、SNS系といった0→1を生み出す難しさしかり、「文明」や「文化」についてしっかり考えていく必要性を再認させられます。従来のしきたりや習慣を改めようとせずかたくなに守ろうとする、旧弊固陋のスタンスでは時代に取り残されるという感想を抱いた一冊です。

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近年では、学術・研究用だけではなく、世界各国で衛生データを用いたビジネスが創出されています。物流や、株価予想、防災など、多くの民間企業が事業を推進しているなか、地球を広範囲に調べた衛生データを利用する領域が増大していくのは、フィードバック制御を利用した文明の進化を担っていく上で重要な要素になっていくことでしょう。

こうした状況で、人工衛星の打ち上げ数が年々増加傾向にある日本ですが、今後どのように進展するのか楽しみです。

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