現代の生活が抱える問題点として、義務教育レベルで均質化/隷属化を推し進める方向性があげられます。それは、「ただしい」社会のあり方と、「きゅうくつ」な生活を秩序立てて形成する一方で、そこから逸脱したものを不適合者として「死ぬまで」呪い続けることになるからです。
そんな踊り場のないレールの敷かれた現代において、少数意見は当然のように軽視され、ごく当たり前のようにポピュリズムが横行します。それはまるで、真実の行方を覆い隠すかのように……
本書では、そのような問題に他者性というファジーな領域を設定することで、現代を「ここちよく」生き抜くための心構えを授けてくれる至高の一冊です。本書を通じて、思考を柔軟にするためのエネルギー補給はいかがでしょうか。
現代思想を通して、太古の昔から連綿と継承されていく哲学の叡智を感じることができる良書です。
本書目次
はじめに 今なぜ現代思想か
第一章 デリダーー概念の脱構築
第二章 ドゥルーズーー存在の脱構築
第三章 フーコーーー社会の脱構築
ここまでのまとめ
第四章 現代思想の源流ーーニーチェ、フロイト、マルクス
第五章 精神分析と現代思想ーーラカン、ルジャンドル
第六章 現代思想のつくり方
第七章 ポスト・ポスト構造主義
付録 現代思想の読み方
おわりに 秩序と逸脱
本書の一番の売りは、自らが現代思想家になるための手引きが記されていることでしょう。
もちろん、はじめににあるように、
現代思想を学ぶと、(中略)単純化できない現実の難しさを、以前より「高い解像度」で捉えられるようになるでしょう。
といった、現代思想のエレメントに沿った書籍の解説も含まれていますが、個人的には新たな現代思想化になるために(p. 176)の現代哲学をするための手続き——新規性、差別化——の項が結構ビビッと来まして、というのも、現代哲学だけでなく、ビジネスライクな発想法としても適用できるのではと思えたからです。
全体を通して重要な項目を太字で表記してくれているので、その部分を最低限押さえておくだけでも現代思想のとっかかりを頭の中に刻むことができます。そしてさらにすごいのが、項目ごとの哲学入門参考文献の量がべらぼうに満載なこと。気になった要素を深掘りしたいなってときに捗るのなんのっていう話で、現代思想をする上でとんでもない粋なはからいに脱帽せずにはいられないな!
所感
哲学書と聞くと、一つ一つのふわふわとした概念を、経験と観測で地道に捕捉いくことに快感を抱くエキセントリックな人たちがレトリック満載のお飾り言語で激ムズに記したものっていうイメージを抱くものですが、本書は入門書よろしく、一般大衆ウケしやすいレイアウトのおかげで、哲学する楽しさを卑近に感じること請負です(個人的には、そうしないといけないような世情はどうなのかしら、という危機感みたいなものもありますが……)。
あくまでこの一冊に満足することなく自分ができる有限な範囲内で哲学することを念頭に、マジョリティに毒されることなく、ファジーな領域をエンジョイできるようになりたいとシンクしたブックです(ルー○柴感)。