日本人と神

本書は、神の問題に対する学問研究の国際化を担うために、新たなフォーマット作りを試みた一冊である。従来の定説とはまるで異なる切り口からの論理構成で形成されており、比較分類とフィールドワークに極めて重きを置かれている一冊だ。

本書目次

序章 鳥居のある寺、死者を祀る社
第一章 聖性の覚醒——有史以前
第二章 定住する神々——始原から古代へ
第三章 救済者の探求——古代から中世へ
第四章 煉獄の拡張——中世から近世へ
第五章 還俗する来世——近世から近代へ
終章 神のゆくえ

本作品を読み始めるあたって、タイトルである『日本人と神』というフレーズから想起した第一印象は、「日本人の神性」の淵源をつらつら述べる概説書なのかなっていうものだったのですが、多大なる思い違いをしていたと懺悔……現代社会に眠る諸問題を、そしてそれらを生み出してきた歴史を完全にフラットな状態から検討する姿勢から鑑みるに、「日本人の神性」を個人個人が再考するための新たなフレームワークとして本作は現代においても十全に機能しているので、興味を抱きやすいつくりになっています。とりわけ個人的には、終章の概要に目を通した上で序章から読み進めると、頭の中で道筋を形成した上で読み込むことができるので、より理解しやすいのかと思います。

本書を一通り読み終えた後、現代社会を生きる上で言語化できていなかった精神負荷の澱がはけました。

作者: 佐藤 弘夫
講談社

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