ニュースの“なぜ?”は地政学に学べ

現在の日本において、地政学という単語に耳馴染みがない人は多いだろう。

その理由としては、

戦前の日本の地政学が、大東亜共栄圏を根拠づけ日本の膨張政策を推進したとして、戦後GHQにより禁止され、その後、学会においてもタブー視されてきた

地政学とは何か−地政学再考−/庄司潤一郎(PDF)*1

からである。戦前においては、マハンに師事した秋山真之は地政学を日本に持ち込み、日露戦争の勝利に貢献。その後の日本海軍はマハンの「忠実な実行者」となった。このように、海洋国家としての日本を語る上で地政学は重要な学問であったが、敗戦による影響は地政学の暗黒時代を生み出す契機となった。

そして現在、長き沈黙の帷をあげ始めた地政学という強烈な学問を前にして、そのパワーを存分に味わえるのが本書だ。本書は、ニュースでは教えてくれない世界情勢の行末が、地政学を通して浮かび上がる一冊である。「ウクライナ戦争」の「今」から始まり、「米中冷戦における日本の行末」「中国の台湾侵攻」といった旬のトピックの痒いところに手が届く。なぜ、ウクライナは「徹底抗戦」を選択したのか、人命を最優先に考えるなら早めに降伏をすべきではないか……中国が台湾へと侵攻する意図を見せる意味は……

いずれの国家も、地政学というワイルドカードを駆使して躍動している姿を鑑みるに、アメリカの「傀儡国家」としての日本はどう発展していくべきなのであろうか。

本書のあとがきに代えてにあるように、

カネだけ、今だけ、自分だけ。

カネになるなら安全保障とかどうでもいい。

今がよければ次の世代とかどうでもいい。

自分がよければ国とか地域とかどうでもいい。

といった現状を打破するための、22世紀的民主主義を考える必要があるだろう。

*1:この辺りの話は、日本学術会議問題~大学での軍事研究を禁止したのはGHQ 江崎道朗のネットブリーフィング 菟田中子【チャンネルくらら】が詳しい

作者: 茂木誠
SBクリエイティブ

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