真夜中の底で君を待つ

言葉は、その捉え方如何によって毒にも薬にもなります。励ましの意味合いで伝えた言葉は、ときに、相手に負荷をかけたり、冗談で場を盛り上げようとしたら真面目に捉えられたり……このようなすれ違いは、言葉を使ってコミュニケーションをとる以上避けて通れません。言葉には、単なる辞書的意味だけでなく、使い手の人格が溶け込んでいるからです。

特に、「優しい人」は苦労することが多いでしょう。一つ一つの言葉のニュアンスが、まるで荊のように形をつくり、自らを縛り上げるのです。そうして言葉を交わせば交わすほど、傷つき、不安になります。

本書に出てくるヒロインたちも、そういう痛みを抱えた「優しい」人たちです。だからこそ、言葉をつかって自分の運命を切り開こうとする姿勢には心を打たれます。

本書を通じて、言葉の持つ力を感じて欲しいと思えました。

その人を見るだけで心に喜びが湧く、そんな心があるとは、人生にとって何という祝福だろう。    (「心の落着きについて」7−1 『ローマの哲人 セネカの言葉』)

汐見夏衛さんの著作をすべて読ませていただいたのですが、言葉の使い方が綺麗で美しい。キャラクターの対比のさせ方から、指数関数的に熱を帯びるストーリーの演出のさせ方等々、枚挙にいとまがないほどの魅力の数々。なんというか、汐見夏衛さんの著作のもっている力:全体を通して「自分自身への信頼を取り戻すために必要不可欠な道筋」を通して、徳の積み方までは飛躍し過ぎ方かもしれませんが、道徳的成長の仕方を学べるような気がします。

Watch your thoughts, for they become words. Watch your words, for they become actions. Watch your actions, for they become habits. Watch your habits, for they become character. Watch your character, for it becomes your destiny.

——「考えは言葉となり 言葉は行動となり 行動は習慣となり 習慣は人格となり 人格は運命となる」

Margaret Hilda Thatcher

作者: 汐見夏衛
幻冬舎

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