限られた時間的制約下におかれた人間模様を彩る、理性的な動物の強さと弱さ。
それらが込められた一文一文の重みは筆舌に尽くし難い衝撃を読者に与え、それはそれはボディーブローのようにじわじわと内臓系に効いてくる打撃の連続。
ノックアウト寸前に去来する「君の膵臓をたべたい」というタイトルに込められた想いは、とどめの一撃として機能するにはあまりにも強烈な欲求——
本書は、特別な誰かと特別な何かを共有することで得られる「痛み」が、痛いほど伝わる一冊です。
あらすじ
ある日、高校生の僕は病院で「共病文庫」というタイトルの文庫本を拾う。それは、クラスメイトの山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。そこには、膵臓の病気により彼女の余命が残りわずかと書かれていて——
おすすめポイント
「一日の価値は全部一緒なんだから、何をしたかの差なんかで私の今日の価値は変わらない。私は今日、楽しかったよ」
年齢の上下あるなしに達観した領域へと踏み込めているのは、もはや恐怖に近しいものさへ感じてしまった一文です。死を悟って強く振る舞おうとする桜良の言葉は一つ一つが重くて、それらの描写の数々は、彼女自身の弱さが吐露された時にさらに際立ちます。
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人っていうのはつくづく、いろいろな人との関わり合いの中で形成されていく存在なんだと身にしみて感じることができた素晴らしい一冊です。