私は桜が好きです。
といっても、今まではただ漫然と何気なく見るのが好きで、その姿の表出する美しさや、健気さ、儚さといった趣向にそれほど興味がありませんでした。ただ単純に見ているだけでも楽しいみたいな。
しかしながら本書を通して、そこに込められた思いは一体どのような色を縁どるのか想像するだけでも楽しさを感じるようになりました。無限の可能性が潜むそこに存在するのは、未来へとつき進む人たちへの手向けか、それとも、儚く散りゆく人たちへの手向けか。単なる風景の一部として眺めるだけでは知り得ない確かなもの。それは、本書の主人公みたいに積極的に切り取っていくことでしか見出すことができないものなのかもしれません。もっというと、後悔のない日々を過ごさないように、日々を積極的に生きるということ。私がこの本から得られたのは、何気なく見ているだけでは見ることができない景色というものがあるということなのかもしれません。
常に情報のアンテナを張るためにも、いろいろな小説を通して自分の姿を振り返ってみたい。そして、桜の季節になるたびに、この物語をどんな気持ちで思い出すのか感じたい。そう思えた一冊でした。