生物はなぜ死ぬのか

本書は、生物がなぜ死ななければならないのか、という命題について生物学の見地から紐解いていく一冊です。とりわけ、遺伝子情報の記述に重みづけがなされています。

豊富な図表で知識を補完してくれているので、とても読みやすい作り。

本書目次

第1章 そもそも生物はなぜ誕生したのか
第2章 そもそも生物はなぜ絶滅するのか
第3章 そもそも生物はどのように死ぬのか
第4章 そもそもヒトはどのように死ぬのか
第5章 そもそも生物はなぜ死ぬのか

生物は「選択と変化」を経て生きてきた文脈を考えたとき——コミュニティが作る個性(p. 176)——多様性の中に生きることの重要性を知れます。ただ、一口に多様性と言ってもそれを「強要」するのではなくて、あくまで「許容」することが重要であると着目している点が素晴らしい。

そうすることで、多様性というワードそれ自体が柔軟な弾性を持ち、幅をもった生き方に対して寛容でいられることができます。その有用性は数々の研究から示されていますが[1]、遺伝子レベルで長期的に真の価値を見出そうとする生存戦略には脱帽です。

「死」の正体

本書を読む前は、「死」に対して漠然とした不安を抱えていましたが、死の意味の記述や(p. 204)や、存在理由(p. 216)の記述に触れ、次の世代へとつなぐ「生」のために「死」が組み込まれているという視点を得れたのは、非常に有意義でした。

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旧弊固陋の生き方に今一度疑問を投げかけ、同世代で固まるだけではなく色々な世代で語り合う環境づくりが大事であると知れます。

[1]『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』

作者: 小林 武彦
講談社

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