サラ金の歴史

本書は、サラ金の歴史をおよそ1世紀にわたって辿ることができる一冊となっております。

最近ですと、わりかしポップなCMが流れていたり、都市部駅前ならほぼほぼ存在する無人ATMだったりと、サラ金が生活の一要素として市民権を得ていることは確かな事実ですが、リアルタイムで武富士の恐喝ニュースを見ていた者としては、『よくわからないけどなんだか悪そう』という印象で読み始めまして、読了後は、サラ金は悪というひとくくりでは包括できないという認識へと変化いたしました。

もちろん、債務者への非人道的な所作は決して許されるものではありませんが……それでも、認知バイアスをかけて「人種」問題へとシフトさせたり、金融技術の濫用には気を付けていく必要があるという訓戒を学べます。

本書目次

序 章 家計とジェンダーから見た金融史
第1章 「素人高利貨」の時代
第2章 質屋・月賦から団地金融へ
第3章 サラリーマン金融と「前向き」の資金需要
第4章 低成長期と「後ろ向き」の資金需要
第5章 サラ金で借りる人・働く人
第6章 長期不況下での成長と挫折
終 章 「日本」が生んだサラ金

個人的に印象深かったのは、融資残高を増やすという前提において、金融機関の信用を勝ち取る難しさや、企業統治の難しさ(p. 273)、急成長を支える技術革新の導入(p. 254)等々、それらの血の滲むような努力の結果として、融資対象を拡大することがワラにもすがる人を救うという奇怪な側面です。

また、第5章にピックアップされているデータの数々には、目を見張るものがありました(何回もめまいを催してしまいました……)。

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全体を通して、自分の生活とサラ金とが切っても切り離せない関係だと知れたのには驚嘆いたしました。明日は我が身と構えて、行動経済学まわりの知識をつけていきたいとも思えた一冊です。

作者: 小島 庸平
中央公論新社

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