本書は、学校や家の中を避け、喫茶店でもくもくとアルバイトに勤しむ孤独な少女が、常連さんの「黒縁さん」と出会ったことで成長していく物語。
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言葉は時に、残酷だ。
出自が異なる人々が関われば関わるほど、その分だけ捉え方の幅が広がる。
自分が本来意図していないものにとらえられれば、時として、相手を傷つけ、恨まれ、蔑まれ。そうかと思えば、相手を守り、恩を受け、尊ばれ。
でもそれは、自分の考えを言葉にするからこそ生まれる側面で、言葉として言語化しなければ生まれない。
そうすれば、誰も傷つけず、平和で、理想的な世界が広がる。
沈黙の海に沈むことで形成される世界。でもその底は、暗くて、じめじめして、光が届くことがない場所。
わたしは、そんな世界で生きていけるほど孤独に耐えられる力を持っていないし、かといって、共感を得たいっていうのを声高に叫ぶことができるほど、できた人間じゃない。
だからこそ、
言葉で伝えることから逃げていてはいけないんだ。
どんな言葉でも、つたなくても、たった一人にでも届いてくれることを願って、言葉で表現し続けているんだと思う。