歴史を学ぶならまず通史からならぬ、達人からといった印象を受けた一冊です。そして、その達人に対する著者の質問力の高さが本書を色鮮やかに飾っています。
名著が書かれたその当時の勘所を押さえてくれているので、「わかりづらくて読みにくい」部分でも、「なんとなくわかった気になれる」そういう一冊でもあるし、歴史を知ることの意義も知れます。
かつて、ドイツの哲学者ヘーゲルは、人間に内在する精神性が動的に歴史を形作る旨の議論を展開しましたが、本作ではまさしく、その一文の意味を噛み締めることができるでしょう。
The true is the whole. —— Georg Wilhelm Friedrich Hegel
本書を読み通した時に、かちっ、と頭の中で何かがはまった感じがいたしました。
生きる上で、何となく狭苦しさとか、息苦しさを覚える人にとって、本作はきっと隘路を照らす一筋の道標になってくれます。
目次
第1回 ダンテ『神曲』 原基晶
第2回 紫式部『源氏物語』 大塚ひかり
第3回 プルースト『失われた時を求めて』 高遠弘美
第4回 アインシュタイン「相対性理論」 竹内薫
第5回 ルソー『社会契約論』 東浩紀
第6回 ニーチェ『ツァラトゥストラ』 竹田青嗣
第7回 ヒトラー『わが闘争』 佐藤卓己
第8回 カミュ『ペスト』 佐々木匠
第9回 『古事記』 三浦佑之
第10回 マーガレット・ミッチェル 『風と共に去りぬ』 鴻巣友季子
第11回 アダム・スミス『国富論』 野原慎司
第12回 マルクス『資本論』 的場昭弘
とりわけ、本作おわりにの部分では著者自身の名著読みどころが提案されているので、これを読んでから本題に入るのがおすすめです。
そうすることで、名著の概要をスムーズに捉えることができるようになるので、一つ一つの本を自ら読み解いていくよりも、要素要素の足がかりができるので読書が捗ります。
まさに本書は、学ぶことまねぶこと、と、切に感じ取れる一冊でもあります。
学問をするのに,簡単な道など無い。だから、ただ学問の険しい山を登る苦労をいとわない者だけが、輝かしい絶頂を極める希望をもつのだ。
「資本論」フランス語版序文