本書は、1866年にロバート・L・スティーヴンソンによって刊行された怪奇小説だ。著者の代表作である冒険小説『宝島』(1883)とはうってかわって、人間のほの暗い影の部分が強調されている。そのため、読後感は結構どんより。
舞台は19世紀のロンドン。語り手である弁護士が、高名な紳士のジキル博士と見たものに恐怖を与えるハイドの関係性を紐解いていくストーリーだ。ストーリーは至ってシンプルだが、両キャラクターの対比によって描かれる善悪という人間の心理が物語に奥行きを与えている。それに加えて、個性豊かな登場キャラクターたちは一度見たら忘れないほどのインパクトを与えてくれるだろう。全体は150ページ弱に収まるほどの分量でサクッと読めるが、文脈に秘められたエネルギー総量は計り知れない。
新潮文庫の100冊にピックアップされているので、この機会にぜひ手に取って欲しい一冊。
Fair is foul, and foul is fair. きれいは汚い、汚いはきれい。
シェイクスピア『マクベス』